「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方2024」~変革のための生成AIへの向き合い方~ の公表
掲載情報の概要
- 掲載日: 2025年7月1日 改訂日: 2025年7月12日
掲載趣旨
- この報告書では、生成AI技術の急速な進化が日本のビジネスにもたらす影響と、企業がどのように対応していくべきかについて考察しています。中小企業において、競争力を持ってビジネスを発展させるためには、AIの活用は必然です。
参照元
情報のポイント
- 生成AI技術の急速な進化が日本のビジネスにもたらす影響と、企業がどのように対応していくべきかについて考察している。
- また、生成AI技術の進化が既存のビジネスモデルにもたらす変革についても言及し、企業は変化を恐れず、積極的に生成AIを活用していくべきだと提言している。
- DX推進人材には「問いを立てる力」や「仮説を立て・検証する力」、に加えて「評価する・選択する力」が求められる。
生成AI導入の段階
- フェーズ1:生成AI利用基盤の導入と業務上の活用
- 個人レベルでの単一の業務・タスクが生成AIによって代替・補完・高度化される
- 具体例:議事録作成、メールドラフト作成、会議中のアジェンダ作り、意⾒やアイデア創出の壁打ち、文書の要約、翻訳、情報の検索、プログラミング、画像・動画・音楽の作成
- フェーズ2:生成AIを活用した業務の高度化・効率化
- 社内業務プロセスについて生成 AI を前提として再定義し、時に複数の業務を横断する形で対象
- 業務の品質、コスト、スピードを向上させる。
- 企業における具体例:
- 保守オペレーションの改善の企画の自動化
- 設備の稼働状況の自動監視
- 保守オペレーションにおける知⾒の集約・実施すべき対応の初期判断
- 広告業におけるクリエイティブ企画業務
- フェーズ3:生成AIを活用したビジネスモデル変革・価値創造
- 生成AIを活用した既存製品・サービスの価値向上や新規製品・サービスを提供し、顧客体験を変革する。
- 企業における具体例:
- CtoC売買サービスにおける商品説明文の作成アシスタント
- 教育サービスにおいて、研究等をAIに相談ができるサービス
- リノベーションを検討中のユーザー向けの、リノベーションプランを策定・企画するサービス
- 生成AIと人間のハイブリッド型でのコールセンターサービス
- 転職支援サービスにおける職務履歴書の自動作成機能
- AIによる創薬の実施
- AIアバターによる商業施設での接客
求められるスキル
- ビジネスアーキテクト:
- 選択肢から適切なものを判断する選択・評価する力
- デザイナー:
- 独自視点の問題解決能力、顧客体験を追求する姿勢
- データサイエンティスト:
- 利活用スキル(使う、作る、企画)、背景理解・対応スキル(技術的理解、技術・倫理・推進の各課題対応)
- ソフトウェアエンジニア:
- AIスキル(AIツールを使いこなす)、上流スキル(設計・技術面でビジネス側を牽引)、対人スキル
- サイバーセキュリティ:
- AI活用の利益とリスク評価、社内管理スキル、コミュニケーションスキル
経済産業省における政策対応
- 「デジタルスキル標準(DSS)」の見直し
- 2023年8月の「DXリテラシー標準(DSS-L)」(2022年3月策定)の⾒直しに続き、 DXを推進する人材類型の役割や習得すべきスキルを定義した「DX推進スキル標準(DSS-P)」(2022 年12月策定)の⾒直しを行う。
- デジタルスキル標準に「プロダクトマネー ジャー」の定義を正式に追加する。
- 「デジタルガバナンス・コード」の見直し
- 「デジタルガバナンス・コード」は、経営者がDXによる企業価値向上の推進のために実践すること が必要な事項(ビジョン・戦略等)をまとめたDX時代の経営の要諦集である。
- AI 学習機会の裾野の拡大
- 「第四次産業革 命スキル習得講座(Reスキル講座)認定制度」のIT分野について、2023年10月申請より、デジタルスキル標準に紐づく講座について新たに募集を開始し、E資格等のAI関連資格の 講座を認定した。
- 生成AI時代に求められる継続的な学びの実現に向けた環境整備
- 個人のデジタルスキル情報の蓄積・可視化を可能とする情報基盤の構築を検討するとともに、スキル情報を広く労働市場で活用するた めの仕組みを検討するべきである。
各種団体における取組例
デジタルリテラシー協議会
- ビジネスパーソンが持つべきデジタル時代の共通リテラシーを「DiLite」として定義。
- そして、「Di-Lite」に対応した IT に関する基礎的知識を問う「IT パスポート試 験」、データサイエンスの知識を問う「DS 検定リテラシーレベル」、AI・データの知識を問う「G 検 定」の 3 試験の、合格数に応じてデジタルバッジを発行する仕組みとして「DX 推進パスポート」を 開始。
- DX 推進パスポート対象の 3 試験はいずれも、生成 AI に関する内容を含む形に改訂。
- 【参考】プレス発表 「DX推進パスポート」デジタルバッジの発行を開始します | プレスリリース | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
独立行政法人 情報処理推進機構 (IPA)
- IT を利活用するために必要な共通的知識を問 う「IT パスポート試験」において、生成 AI の登場が国民生活や企業活動に大きなインパクトを与えている現状を踏まえ、生成 AI の仕組み、活用例、留意事項等に関する項目・用語例を 2024 年 4 月に追加。
- 【参考】ITパスポート試験におけるシラバスの一部改訂について(生成AIに関する項目・用語例の追加など) | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
一般社団法人 データサイエンティスト協会
- スキル定義委員会において政府のスキル標準とも 連携している「スキルチェックリスト」、IPA の ITSS+(プラス)におけるデータサイエンス領域の「タ スクリスト」を生成 AI の普及状況を踏まえ 2023 年 10 月に改訂し、AI 関する項目を追加。
- ま た、同改訂を踏まえ、2024 年 6 月にデータサイエンティストに必要なスキル・知識を測る「DS 検 定」のシラバスを改訂し、AI に関する設問を追加。
- 【参考】
一般社団法人 日本ディープラーニング協会(JDLA)
- 2023 年 12 月に第二回 「Generative AI Test」を開催し、受験者数は第一回 1,122 人から、第二回では 1,822 人 に増加。
- 2023 年 5 月に公開した「生成 AI の活用ガイドライン」の続編として、特に画像生成の 分野に特化した「生成 AI の利用ガイドライン(画像編)」を 2024 年 2 月に公開。
- また、企業 への生成 AI 導入を後押しすることを目的に、生成 AI 導入事例、先進企業のブース設置(取 組展示・個別相談)を行うイベント「JDLA Connect」を 2024 年 2 月に開催。
- 更に JDLA は、ディープラーニングに関する知識を問う「G 検定」のシラバスを 2024 年 11 月に改訂し、生成 AI の技術に関する分野を追加する予定。
- 【参考】
一般社団法人 生成 AI 活用普及協会
- 基礎的な試験としての「生成 AI パスポート」を開始 し、2023 年 9 月に第 1 回試験を実施し、受験者数は 1,031 名となり、2024 年 2 月の第 二回開催では受験者数は 1,613 名に増加した。
- また、「生成 AI パスポート」のパートナー企業 が提供する E ラーニング講座・学習アプリを認定対策講座として提供し、学習の機会を拡大。更 に、2024 年 6 月に企業向けの生成 AI に関するカスタマイズ研修の提供を開始し、各企業の 環境・業務特性に応じて最適な研修プランを提供。
- 【参考】
デジタル人材育成学会
- 生成 AI などが一般のビジネスの現場にも急速に普及している現状 を踏まえ、AI の活用が自社に与えるリスクを抑え・対応する為の社内体制・マネジメント・規定の 方針について記述した「民間企業における AI リスクマネジメントに関する提言」を 2023 年 10 月に公開。
- 【参考】「民間企業におけるAIリスクマネジメントに関する提言」をリリースします|お知らせ|デジタル人材育成学会
一般社団法人 Generative AI Japan
- 生成 AI 活用における教育やキャリア、協業、共 創、ルール作り、提言を行い、日本全体の産業競争力を高めることを目的に、2024 年 1 月に 設立された。
- 生成 AI における先端技術・ビジネスユースケースの共有、ルール作り・提言、人材 教育に加え、Lab を起点とする産学連携での共創・協業事例創出を目指す。
- 【参考】一般社団法人Generative AI Japan 略称「GenAI(ジェナイ)」
参考になる文献等
- デジタル時代の人材政策に関する検討会 (METI/経済産業省)
- AI戦略会議「AIに関する暫定的な論点整理」(2023年5月26日)
- 経済産業省 「生成 AI 時代の DX 推進に必要な人材・スキルの考え方」(2023年8月7日)