この資料の趣旨
概要
- この資料では、CSF2.0の改訂のポイントと、フレームワーク活用するためのオンラインコンテンツを紹介します。
- NISTサイバーセキュリティフレームワーク(NIST CSF)は、サイバーセキュリティリスクに対応するための包括的なフレームワークであり、2024年2月に約10年ぶりに大幅改訂され、正式に公開されました。
- 中小企業を含めた組織のサイバーセキュリティ対策は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の要件が定義されているISO/IEC 27001、ISMSの実施ガイドラインであるISO/IEC 27002を補完する形で、CSF2.0も活用することにより、より網羅的、体系的な対策の確立を期待できます。
参考文献
- Cybersecurity Framework | NIST
- Navigating NIST's CSF 2.0 Quick Start Guides
- CSF 2.0
- CSF 2.0 Profiles
- CSF 2.0 Organizational Profiles
- Notional CSF 2.0 Profile Template Download(XLSX)
- CSF 2.0 Community Profiles Vist
- CSF 2.0 Organizational Profiles
- Informative References (Mappings)
- Download CSF 2.0 Informative Reference in the Core - Directly download all the Informative References for CSF 2.0 - Select Informative References to be included with the Core Browse
- CSF 2.0 Implementation Examples
- FAQs
- Translations of NIST Cybersecurity and Privacy Resources
- NIST Cybersecurity Framework (CSF) 2.0 Reference Tool
- 解説ページ
この要約資料の改版履歴
- 2024/03/11 Rev.0.1.1
- 2024/03/08 Rev.0.1 暫定版
CSF2.0の改訂のポイント
NIST Cybersecurity Framework(NIST CSF)のバージョン2.0は、2024年2月26日に正式に公開されました。これは、2014年に初版であるNIST CSF 1.0が公表されて以来、約10年ぶりの大幅改訂です。以下に、NIST CSF 2.0の主な改訂ポイントを解説します。重要インフラだけでなくあらゆる規模の組織へ適応範囲の拡大:
- CSF2.0は、重要インフラだけでなく、営利・非営利を問わず、あらゆる規模の組織におけるサイバーセキュリティリスクの低減に資することを目的としています。
- フレームワークの正式名称が「Framework for Improving Critical Infrastructure Cybersecurity(重要インフラのサイバーセキュリティを向上させるためのフレームワーク)」から、より汎用的な「Cybersecurity Framework(サイバーセキュリティフレームワーク)」に変更されています。
経営層の主導で対策を行うためのガバナンス機能の追加
- ガバナンス機能は他の5つの機能(識別、防御、検知、対応、復旧)の目標達成や組織内の優先順位付けをするためのものと定義され、CSF2.0の中心的機能と位置づけられています。
- NIST CSF 2.0は、新しい機能として「Govern(統治)」を導入し、組織のミッションや目標に沿ったサイバーセキュリティの管理を促している。
- NIST CSF 2.0は、サイバーセキュリティを企業リスクの一つと位置づけ、経営層の主導で対策と改善を行うことを推奨している。
フレームワーク活用するための補助リソースのリリース
- CSF2.0本体は大きく次の3つのコンポーネントから構成されています。それらのコンポーネント構成やその定義に大きな変更はありませんが、今回のCSF2.0にあわせてサイバーセキュリティリスク対策を推進・補助するための多くの補助リソースがリリースされています。
- 実装例:これは、特定のサブカテゴリーをどのように実装するかのベストプラクティス(最良の方法)を示している。
- 参考情報:これは、目標達成に役立つ他のガイドラインやリソースを提供している。
- クイック・スタート・ガイド:これは、中小企業などの特定のニーズに対応した専用のガイダンスを提供している。
- そして、NIST CSF 2.0 リファレンス ツールを使用すると、ユーザーはCSF 2.0 コア(機能、カテゴリ、サブカテゴリ、実装例)を探索できる。このツールは、人間と機械が読み取り可能な形式(JSON および Excel)でコアを提供する。さらに、ユーザーは主要な検索用語を使用してコアの一部を表示し、エクスポートすることも可能。これにより、ユーザーは自分のニーズに合わせて情報を探しやすくなる。
サプライチェーンリスクマネジメント項目の拡充
- サプライチェーンリスク管理プロセスが組織のステークホルダーにより識別・確立・管理・監視・改善されること。
- NIST CSF 2.0の最新の改訂では、新たな機能として「GV(統治)」が導入された。この「GV」の下には新しいカテゴリー「GV.SC:サイバーセキュリティサプライチェーンリスクマネジメント」が設けられ、その役割が移行された。これにより、サプライチェーンのリスク管理に必要な対策項目(サブカテゴリー)が大幅に増えた。これは、サプライチェーンのリスクをより効果的に管理するための重要なステップ。
ISO/IEC27001,27002とCSF2.0の活用
ISO/IEC 27001は情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の要件を定義しており、ISO/IEC 27002はISMSの実施ガイドラインです。これらの規格は、情報セキュリティに関する国際的な指針として広く認知され、活用されています。
これに対して、NIST CSFは、サイバーセキュリティリスクに対応するための包括的なフレームワークであり、官民の組織で活用されています。2024年2月に正式に公開されたNIST CSF 2.0は、約10年ぶりの大幅改訂です。
CSF 2.0を活用する意義
- 包括性と実用性:
- NIST CSFは広範な管理策をカバーし、サイバーレジリエンスを強化するための具体的なアクションを提供します。これにより、組織は包括的なアプローチでサイバーセキュリティを向上させることができます。
- 共通言語としての活用:
- NIST CSFは世界中で広く活用されており、組織内外の関係者とのコミュニケーションに役立ちます。特に「GV(統治)」機能は経営層との共通言語として活用できます。
- リスクマネジメントの強化:
- NIST CSFはリスクベースのアプローチを推進し、サプライチェーンリスクマネジメントを強化します。
ISMSは広範な情報セキュリティを対象としていますが、NIST CSFは特にサイバー攻撃の事後対策(検知、対応、復旧)にも多く言及されています。 総括すると、NIST CSF 2.0はISO/IEC 27001, 27002と補完しながら、組織のサイバーセキュリティ対策を強化するための有用なツールとなります。